『非日常のアメリカ文学――ポスト・コロナの地平を探る』

明石書店

辻和彦・浜本隆三編

ISBN 978-4-7503-5480-4

【20世紀的な「日常」を問い直し、ポスト・コロナの地平を探る、野心的な米文学論】

コロナ・ウイルスが引き起こしたパンデミックによって、私たちはいま、従来の20世紀的な日常とはすこし異なる「非日常」の世界を生きている。

本書『非日常のアメリカ文学』は、コロナという人知を超えた災厄と対峙する知恵を、ヘンリー・ソロー、マーク・トウェイン、スコット・F・フィッツジェラルド、カート・ヴォネガットらの作品から、先住民作家ヴェルマ・ウォーリス、カリフォルニアのビッグ・サー文学作家やベイエリア現代詩の詩人、身体の日常/非日常を問うファット・リベレーション作家の諸作品まで、「非日常」という共通項を軸に探る。

本書が提案する「非日常」をアメリカ文学に探る試みは、単なる「アウトサイド」な文学の系譜をたどるばかりか、アウトサイドから日常を見直し、ひいては現代文明を問い直す視座をもたらすことになるだろう。コロナ禍とはつまるところ、これまでの文明社会の見直しが迫られた経験であったとはいえまいか。本書を通して、ポスト・コロナの地平を見通す視座を、十人のアメリカ文学研究者達が探る。

目次
【第1部 日常のなかの非日常】

第1章 浜本隆三 コロナ禍に読む『ウォールデン』の空気

第2章 新関芳生 遊びをせんとや生まれけむ――マーク・トウェイン『王子と乞食』におけるごっこ遊びによる非日常化

第3章 林千恵子 ヴェルマ・ウォーリスが描く北米先住民の日常――姥捨て物語が明らかにした真実

第4章 菅井大地 山火事とともに生きる――ビッグ・サー文学における逗留の感覚

【第2部 非日常のなかの日常】

第5章 辻和彦 ニューヨークの幽霊たち――マーク・トウェインと非日常

第6章 坂根隆広 一九二〇年代のアメリカ小説と(非)――『グレート・ギャッツビー』を中心に

第7章 高橋綾子 カルフォルニア・ベイエリア現代詩における「非日常」に対する抵抗

第8章 日野原慶 身体の非日常――『ダイエットランド』と『ファットガールをめぐる13の物語』を通して考える

【第3部 非日常のなかの非日常】

第9章 平田美千子 カート・ヴォネガットのSF小説――『タイタンの妖女』と『猫のゆりかご』

第10章 中山悟視 カート・ヴォネガット『タイムクエイク』における既視感の(非)日常

終章  辻和彦 難破する想像力と非日常

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