会員の皆様には新年いかがお過ごしでしょうか。1月9日(土)の臨時総会・例会(若手シンポジウム)も無事終了し、関西支部の行事もいよいよ残すところ2月例会のWEB上での研究発表を残すのみとなりました。2名の方から研究発表が行われますので、ぜひ聴講していただき、ご質問、コメントをお寄せくださいますようお願いいたします。

昨年を振り返りますと、新型コロナウイルス感染に振り回されたということに尽きるかと思います。関西支部の活動も5月大会は実地での開催は諦め、WEB開催としました。その後、WEB上での個人発表による例会を実施するという新たな試みにも挑戦しました。後半に入ってからは、遠隔会議システムにもある程度慣れてきたということで、オンラインによって10月にはミニ・シンポジウム、12月には支部大会を滞りなく開催することができました。若手シンポジウムの趣旨説明にもありましたが、このコロナ禍の状況において何がよくて何がいけないのか、対面にすべきか遠隔とすべきか、迷いながら企画を進めてまいりました。オンライン開催という点で、発表者、会員の皆様には大変ご不便をおかけしたことをお詫び申し上げたいと存じます。しかし、オンライン開催によって参加者が例年以上に増えたという点では、新たな様式として一つの大きな成果を得ることができました。

このように、コロナ禍の中で、従来とは異なる形式も生まれてきました。それはそれでよいことかと思います。しかし、関西支部のこれまでの積み重ねの中で変わらずに受け継がれていくべきものがあるのも確かです。何を変え、何を受け継いでいくべきか、コロナ禍は私たちにそのことを改めて考えさせる契機となりました。

そのような折、ある作家の次のようなエピソードを目にしました。その作家は若いとき下宿で急に高熱を出し、病院に行こうとジャンパーを羽織って外に出ます。しかし、朦朧となって道にうずくまってしまいます。タバコを吸えば意識がはっきりするかと思い、ジャンパーのポケットからタバコを出して火をつけようとしますが、どうしてもつかない。そこへ一人の男が通りかかり、自分の吸っていたタバコで火をつけてやる。「これは俺の大切な人からもらった火だ。だから、大事にしてくれよ」と言って、去っていく。作家は回復し、後日ふと購入した詩集に次のような詩を見つけ、不思議な機縁を感じます。モダニズム詩人、竹中郁の『動物磁気』(1948)に収められている詩です。

もらった火

      竹中 郁

火を欲しい人はないか
よい色の火です
杉林のなかの焚火のやう
印度の魔術の火のやう

いま啣(くは)へてゐるタバコの火は
先刻(さっき)ゆきずりの人からもらった
ふしぎな火
砂金石色の貴い火

この火をもらひたい人はないか
順送りにもたせて生かしときたい火
一人でもよい 二人なら
なほ一層よい
このタバコ吸ひ切るまでに
誰れか 来ないか

タバコの火が手から手へ移されて受け継がれてゆく――そこにある、人間味のこもった温かさが忘れがたい印象を残します。

関西支部の伝統とは何か。私はそれはあくまでもテキストを大切にして、それを正確に丁寧に読み解いていく精読にあると考えています。例会が対面で行われようがオンラインであろうが、そのことには変わりはありません。1月例会の若手シンポジウムでは、清新な息吹とともに、そのような関西支部の伝統が脈々と受け継がれているのを拝見することができ心強く感じた次第です。

新たな息吹という点では、来年度から新しい事務局となることもお知らせしておきます。新事務局として、京都大学の森慎一郎先生、小林久美子先生、京都ノートルダム女子大学の大川淳先生、編集事務局として京都先端科学大学の古木圭子先生にお願いすることになりました。まだコロナ感染の拡大がどうなるかわからない状況で、新事務局には大変ご苦労をおかけすることになりますが、会員の皆様におかれましては、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。また、併せて、現事務局の先生方にも、特にこの1年は大変なご尽力を賜りました。この場をお借りして感謝申し上げます。

アメリカ文学会全国大会での発表申し込みは3月末日が締切です。また、支部例会での発表希望も随時(できましたら早めに)お寄せ下さい。また、『関西アメリカ文学』への投稿(4月15日締切)もよろしくお願いいたします。いずれも支部ウェブサイトに応募要領を記しておりますのでご参照下さい。また、メールアドレスをお持ちの場合は、(変更も含めて)支部WEBページを通して、あるいはメールで事務局までお知らせいただければ幸いに存じます。以上は、2021年3月末日までは、現事務局までお願いいたします(次期事務局の連絡先・メールアドレスは、後日関西支部ウェブサイトでお知らせいたします)。

この4年間、つたない支部運営ではありましたが、皆さまのお力添えをいただき、なんとか支部活動を維持することができました。ここに篤く御礼申し上げます。来年度の関西支部の活動がますます充実することを祈念して年頭のご挨拶とさせていただきます。

支部長  西谷拓哉