松永京子著 『北米先住民作家と〈核文学〉――アポカリプスからサバイバンスへ』

北米の先住民作家による核のナラティヴ、それは複雑で豊饒な文学体系である。
〈ニュークリア・アポカリプス〉や〈消えゆくアメリカ人〉という植民地主義的マスター・ナラティヴを拒絶し、サバイバイルの物語を形成してきた北米先住民作家による〈声〉の重要性を示した研究書。

【目次】

序章 〈核文学〉研究の再構築
ニュークリア・アポカリプスと文学的想像力
修辞的戦略としてのエコロジカル・アポカリプス
〈汚染の言説〉としての〈核文学〉
〈消えゆくアメリカ人〉と核の植民地主義のレトリック
核をめぐる先住民文学

第一章 サイモン・J・オーティーズの「ファイト・バック」
―― 核の植民地主義から抵抗とサバイバルのナラティヴへ
「奇妙な夜明け」の意味
アメリカ南西部の植民地化とプエブロの反乱
ウラン鉱石を「発見」したインディアン
〈最下層〉に置かれる人々
労働者の連帯へ向けて
「よい方向」への視点の転換
闘争とサバイバルのナラティヴ

第二章 レスリー・マーモン・シルコウの進化する「儀式」
―― アトミック・エイジを凌駕する物語の力
アトミック・エイジの「病(やまい)」
ラグーナ・プエブロとウラン鉱山
有刺鉄線を越える核の風景
妖術のナラティヴとニュークリア・アポカリプス
進化する儀式
古くて新しい物語

第三章 レスリー・マーモン・シルコウの『死者の暦』における蛇の表象
―― ウラン鉱山、革命の精神、そして地球的ヴィジョン
『儀式』から『死者の暦』へ
スターリングの帰還とウラン鉱山
部族と大陸を超える蛇の精霊の力
アフリカ大陸とウラン鉱山
〈南〉から〈北〉へ
地球規模の視点への転換

第四章 シャーマン・アレクシーとウラン鉱山のポエティクス
――サーモンと〈奇跡的な生き残り〉の物語
アレクシー評価再考
ハンフォードをめぐる語り
ミッドナイト鉱山のポエティクス
太陽の昇るミッドナイト鉱山
サーモンのゴーストダンス
〈奇跡的な生き残り〉の物語

第五章 マリルー・アウィアクタと原子の詩学
――コーン・マザー〈セイルー〉とサバイバルの物語
〈アトミック・ベイビー〉の誕生
〈アトミック・フロンティア〉――オークリッジの起源
〈アトムの保留地(リザベーション)〉――山と原子が出会うところ
近代科学、暴力、原爆――ベーコン、デカルト、ホッブズ
コーン・マザー〈セイルー〉の教えとサバイバルのポエトリー
科学と詩学が出会うところ

第六章 ジェラルド・ヴィゼナー『ヒロシマ・ブギ』における原爆ナラティヴの軌跡
――大田洋子と〈ニュークリア・サバイバンス〉
原爆ナラティヴと〈ネイティヴ・サバイバンス〉
〈再現〉される『屍の街』
『夕凪の街と人と』に見る〈平和〉の〈暴力〉
空洞化する〈平和〉/脱構築される〈平和〉
過激なレトリックの意味と意図
〈ニュークリア・サバイバンス〉とトリックスター
原爆ナラティヴの可能性、もしくは原爆ナラティヴからの解放

終章 〈核文学〉研究のこれから
核をめぐる文学の多様性
公民権運動と核のナラティヴ
日系文学と原爆
三・一一以降の〈核文学〉

あとがき
初出一覧
引用参考文献
索引

英宝社/329ページ/2019.5.31/3,400円+税/ISBN978-4-269-75035-7

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