中西佳世子『ホーソーンのプロヴィデンス―芸術思想と長編創作の技法―』開文社出版
2017年12月刊行 ISBN:978-4-87571-091-2 定価 2800円(本体価格+税)

【概要】
ホーソーンは『旧牧師館の苔』以降、短編から長編へと創作スタイルを移行させたが、そのどの長編ロマンスにもプロヴィデンス(神の摂理)という宗教的概念と語が遍在している。作家がロマンスを手掛けた19世紀中葉では、プロヴィデンスの概念によって創生された、雑多なアメリカ特有の社会的・政治的言説が流布していた。本書は、プロヴィデンス概念が持つ宗教的属性によって構築されているロマンスの二重構造、ならびに、19世紀のプロヴィデンス言説と作品の間テクスト性を考察し、ホーソーンの芸術思想と長編創作の技法におけるプロヴィデンスの意義を論じている。

【目次】
序 章 「人間世界の偶然の出来事は神の計画」
ホーソーンのプロヴィデンス
第一章 『旧牧師館の苔』
自然の秩序とプロヴィデンス─「二重のナラティヴ」の試み
第二章 『緋文字』
曖昧性を生み出すプロヴィデンス─幻影と「魔女」
第三章 『七破風の屋敷』
人間の歴史とプロヴィデンス─呪いの成就と神の計画
第四章 『ブライズデイル・ロマンス』
創造主としてのプロヴィデンス─劇場神と酒神のアイロニー
第五章 『大理石の牧神』
地上を見下ろすプロヴィデンス─二つの「幸運な堕落」
補 章 『フランクリン・ピアス伝』と「主に戦争のことに関して」
奴隷制と南北戦争のプロヴィデンス
むすび
あとがき
年表
参考文献
索引